受身表現と日本国憲法

受身表現からみた日本国憲法



はじめに

本稿では、フィロロジーの立場から「日本国憲法」を受身表現から見た場合、どのような構文的・語法的特徴があり、どのような精神性が表れているのかを考察するものである。
清水康行(一九八九)では、「『日本国憲法』(昭和二一年)は、文語文体ではない、口語文体の法律文として、日本語の文体史上からみても、画期的な文章となった。・・〈中略〉・・『憲法』以降、法令文・公用文も、口語文が普通になる。しかし、前掲『憲法』挙例にもある『何何は・・これを・・する』のように、訓読調を引き継いだ、口語からは遠い言い回しが、この手の硬い文章には、なお残り続ける。このことは、現代の文章語も抱えている一つの大きな問題である」と述べている。


一 日本国憲法の受身文の用例

「日本語版・日本国憲法」の受身文を調査すると、次のようになる(注1)。

日本国憲法の受身文)五二例
一 日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、われらとわれらの子孫のために、諸国民との協和による成果と、わが国全土にわたって自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によって再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。(前文)
二 国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。(第十一条)
三 この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与えられる。(第十一条)
四 すべての国民は、個人として尊重される。(第十三条
五 すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。(第十四条)
六 選挙人は、その選択に関し、公的にも私的にも責任を問われない。(第十五条・2)
七 又、(何人も)犯罪に因る処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない。(第十八条)
八 何人も、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制されない。(第二十条・2)
九 何人も、外国に移住し、又は国籍を離脱する自由を侵されない。(第二十二条・2)
一〇 婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。(第二十四条)
一一 配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚及び家族に関するその他の事柄に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的な平等に立脚して、判定されなければならない。(第二十四条・2)
一二 何人も、法律の定める手続きによらなければ、その生命若しくは自由を奪われ、又はその他の刑罰を科せられない。(第三十一条)
一三 何人も、法律の定める手続きによらなければ、その生命若しくは自由を奪われ、又は(何人も)その他の刑罰を科せられない。(第三十一条)
一四 何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない。(第三十二条)
一五 何人も、現行犯として逮捕される場合を除いては、権限を有する司法官憲が発し、且つ理由となってゐる犯罪を明示する令状によらなければ、逮捕されない。(第三十三条
一六 何人も、現行犯として逮捕される場合を除いては、権限を有する司法官憲が発し、且つ理由となってゐる犯罪を明示する令状によらなければ、(何人も)逮捕されない。(第三十三条
一七 何人も、理由を直ちに告げられ、且つ、直ちに弁護人に依頼する権利を与へられなければ、抑留又は拘禁されない。(第三十四条)
一八 何人も、理由を直ちに告げられ、且つ(何人も)直ちに弁護人に依頼する権利を与へられなければ、抑留又は拘禁されない。(第三十四条)
一九 何人も、理由を直ちに告げられ、且つ(何人も)直ちに弁護人に依頼する権利を与へられなければ、(何人も)抑留又は拘禁されない。(第三十四条)
二〇 又、何人も、正当な理由がなければ、拘禁されず、要求があれば、その理由は、直ちに本人及びその弁護人の出席する公開の法廷で示されねばならない。(第三十四条)
二一 又、何人も、正当な理由がなければ、拘禁されず、要求があれば、その理由は、直ちに本人及びその弁護人の出席する公開の法廷で示されねばならない。(第三十四条)
二二 何人も、その住居、書類及び所持品について、侵入、捜索及び押収を受けることのない権利は、第三十三条の場合を除いては、正当な理由に基いて発せられ、且つ捜索する場所及び押収する物を明示する令状がなければ、侵されない。(第三十五条)
二三 何人も、その住居、書類及び所持品について、侵入、捜索及び押収を受けることのない権利は且つ捜索する場所及び押収する物を明示する令状がなければ、(侵入、捜索及び押収を受けることのない権利は)侵されない。(第三十五条)
二四 刑事被告人は、すべての証人に対して審問する機会を充分に与へられ、又、公費で自己のために強制的手続きにより証人を求める権利を有する。(第三十七条・2)
二五 何人も、自己に不利益な供述を強要されない。(第三十八条)
二六 (何人においても)強制・拷問若しくは脅迫による自白又は不当に長く抑留若しくは拘禁された後の自白は、これを証拠とすることができない。(第三十八条・2)
二七 何人も、自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合には、有罪とされ、又は刑罰を科せられない。(第三十八条・3)
二八 何人も、自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合には、有罪とされ、又は(何人も)刑罰を科せられない。(第三十八条・3)
二九 何人も、実行の時に適法であった行為又は既に無罪とされた行為については、刑事上の責任を問はれない。(第三十九条)
三〇 又、(何人も)同一の犯罪について、重ねて刑事上の責任を問はれない。(第三十九条)
三一 何人も、抑留又は拘禁された後、無罪の裁判を受けたときは、法律の定めるところにより、国にその補償を求めることができる。(第四十条)
三二 両議院は、全国民を代表する選挙された議員でこれを組織する。(第四十三条
三三 両議員は、法律の定める場合を除いては、国会の会期中逮捕されず、会期前に逮捕された議員は、その議員の要求があれば、会期中これを釈放しなければならない。(第五十条)
三四 両議員は、法律の定める場合を除いては、国会の会期中逮捕されず、会期前に逮捕された議員は、その議員の要求があれば、会期中これを釈放しなければならない。(第五十条)
三五 両議院の議員は、議員で行った演説、討論又は表決について、院外で責任を問はれない。(第五十一条)
三六 衆議院が解散されたときは、解散の日から四十日以内に、衆議院議員の総選挙を行ひ、その選挙の日から三十日以内に、国会を召集しなければならない。(第五十四条)
三七 又(内閣総理大臣その他国務大臣は)答弁は説明のため出席を求められたときは、出席しなければならない。(第六十三条
三八 但し、その過半数は、国会議員の中から選ばれなければならない。(第六十八条)
三九 内閣は、衆議院で不信任の決議案を可決し、又は信任の決議案を否決したときは、十日以内に衆議院が解散されない限り、総辞職をしなければならない。(第六十九条)
四〇 前二条の場合には、内閣は、あらたに内閣総理大臣が任命されるまで引き続きその職務を行ふ。(第七十一条)
四一 但し、これがため、追訴の権利は、害されない。(第七十五条)
四二 すべて裁判官は、その良心に従ひ独立してその職権を行ひ、この憲法及び法律にのみ拘束される。(第七十六条・3)
四三 裁判官は、裁判により、心身の故障のために職務を執ることができないと決定された場合を除いては、公の弾劾によらなければ罷免されない。(第七十八条)
四四 最高裁判所の裁判官の任命は、その任命後初めて行はれる衆議院議員総選挙の際国民の審査に対し、その後十年を経過した後初めて行はれる衆議院議員総選挙の際更に審査に付し、その後も同様とする。(第七十九条・2)
四五 最高裁判所の裁判官の任命は、その任命後初めて行はれる衆議院議員総選挙の際国民の審査に対し、その後十年を経過した後初めて行はれる衆議院議員総選挙の際更に審査に付し、その後も同様とする。(第七十九条・2)
四六 前項の場合において、投票者の多数が裁判官の罷免を可とするときは、その裁判官は、罷免される。(第七十九条・3)
四七 その裁判官は、任期を十年とし、再任されることができる。(第八十条)
四八 一の地方公共団体のみに適用される特別法は、法律の定めるところにより、その地方公共団体の住民の投票においてその過半数の同意を得なければ、国会は、これを制定することができない。(第九十五条)
四九 この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする。(第九十六条・1)
五〇 この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であって、これらの権利は、過去数多の試練に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである。(第九十七条)
五一 日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。(第九十八条・2)
五二 この憲法施行の際現に在職する国務大臣衆議院議員及び裁判官並びにその他の公務員で、その地位に相応する地位がこの憲法で認められてゐる者は、法律で特別の定をした場合を除いては、この憲法施行のため、当然にはその地位を失ふことはない。(第百三条)


二 日本語版・日本国憲法−受身表現からの分析

日本国憲法は、漢文訓読調で書かれているため、非情の受身の割合が多いことが予想されるが実際にはどうであろうか。以下に用例数と比率を示してみる。

(受身の用例数)五二例
(有情の受身)三五例(六七・三%)
(非情の受身)一七例(四例は連体修飾)(三二・七%)
→非情の受身については、伝統的な漢文訓読系の古典と同様の出現率であり、明治以降の非情の受身の出現率の高さを考えると、少ない印象を受ける(注2)。しかし、人々が何らかの権利を与えられるものであると考えると、非情の受身の出現率も抑えられるのも納得できる。
(動作主の明示)五例(九・六%)
→動作主の省略が多いことは、英文版において動作主を省略しているためと考えられる。
(主語と明示された動作主との関係)
有情−有情・・〇例(〇%)
有情−非情・・二例(三・八%)
有情−なし・・三三例(六三・五%)
非情−非情・・三例(五・八%)
非情−有情・・〇例(〇%)
非情−なし・・一四例(二六・九%)
※この分類方法は金水敏(一九九一)を参照した。
(ヲ格)一五例(二八・八%)
→通常の受身文には見られないほどの「ヲ格」の出現率の高さであり、「ヲ格」で示されるのは間接受身の婉曲的表現、あるいは、目的格の人権を明示している。このことは、憲法の大きな特徴であると考えられる。

内容別に観察すると、次のような受身の出現率となる。

前文・・一例(一・九%)
第一章 天皇(第一条−第八条)・・〇例(〇%)
第二章 戦争の放棄(第九条)・・〇例(〇%)
第三章 国民の権利及び義務(第十条−第四十条)・・三〇例(五七・七%)
第四章 国会(第四十一条−第六十四条)・・六例(一一・五%)
第五章 内閣(第六十五条−第七十五条)・・四例(七・七%)
第六章 司法(第七十六条−第八十二条)・・六例(一一・五%)
第七章 財政(第八十三条−第九十一条)・・〇例(〇%)
第八章 地方自治(第九十二条−第九十五条)・・一例(一・九%)
第九章 改正(第九十六条)・・一例(一・九%)
第十章 最高法規(第九十七条−第九十九条)・・二例(三・八%)
第十一章 補則(第百条−第百三条)・・一例(一・九%)

この結果から、第三章「国民の権利及び義務」(一〇から四〇条)に頻出していることがわかる。第三章は、全体の中での出現率は五七・七%である。これは、国民の権利や義務は与えられているものであるということを明示する内容と符合するといえる。
また、一文の中に受身の用例が次のように二例以上使われている文が目立つのも特徴的である。

○何人も、法律の定める手続きによらなければ、その生命若しくは自由を奪われ、又はその他の刑罰を科せられない。(第三十一条)−3例使用
→対句的な表現で、「ヲ格」もそろえ、「れる」「られる」を用い、「ない」の形式による対偶表現で示している。
○何人も、現行犯として逮捕される場合を除いては、権限を有する司法官憲が発し、且つ理由となってゐる犯罪を明示する令状によらなければ、逮捕されない。(第三十三条)−2例使用
→「逮捕する」という動詞に「れる」が接続している。
○何人も、理由を直ちに告げられ、且つ、直ちに弁護人に依頼する権利を与へられなければ、抑留又は拘禁されない。(第三十四条)−2例使用
→対句的な表現であり、「れる」と「られる」を用いている。
○又、何人も、正当な理由がなければ、拘禁されず、要求があれば、その理由は、直ちに本人及びその弁護人の出席する公開の法廷で示されねばならない。(第三十四条)−2例使用
→有情の主語と非情の主語とでわけている。
○何人も、その住居、書類及び所持品について、侵入、捜索及び押収を受けることのない権利は、第三十三条の場合を除いては、正当な理由に基いて発せられ、且つ捜索する場所及び押収する物を明示する令状がなければ、侵されない。(第三十五条)−2例使用
→いずれも同じ非情の主語を用いている。
最高裁判所の裁判官の任命は、その任命後初めて行はれる衆議院議員総選挙の際国民の審査に対し、その後十年を経過した後初めて行はれる衆議院議員総選挙の際更に審査に付し、その後も同様とする。(第七十九条・2)−2例使用
→「行う」という動詞に「れる」が接続し、「衆議院議員選挙」を修飾する、きれいな対句的な表現となっている。

これらは、漢文訓読の影響を受けているためか、対句的な表現となっているが、その対句的な在り方は、有情・非情の主語、同一の動詞、「ヲ格」、対偶表現でそろえている、などが指摘できる。


結び

結びとして、本稿の結論をまとめてみる。

○日本語版日本国憲法では、第三章「国民の権利及び義務」(一〇から四〇条)に頻出している。日本語版日本国憲法の受身全体(五二例中)での受身の出現率は五七・七%である。これは、国民の権利や義務は与えられているものであるということを明示する内容と符合するといえる。
○一文の中に受身の用例が次のように2例以上使われている文が目立つのも特徴的で、これは漢文訓読の影響を受けた対句的表現であるといえる。



〈注1〉
大日本帝国憲法の受身表現は次のように三例ある。いずれも動作主を明示し、「サ変動詞+らる」の形をとっている。
一 日本臣民ハ命令ノ定ムル所ノ資格ニ應シ等シク文武官ニ任セラレ及其ノ他ノ公務ニ就クコトヲ得(第十九條)
二 貴族院貴族院令ノ定ムル所ニ依リ皇族華族及勅任セラレタル議員ヲ以テ組織ス(第三十四條)
三 衆議院ハ選擧法ノ定ムル所ニ依リ公選セラレタル議員ヲ以テ組織ス(第三十五條)

新旧教育基本法の受身表現は以下の通りであり、「れ・られ+なければならない」が慣用的に使用されている。
(旧教育基本法)一九四七年
一二例中九例(七五・〇%)が「れ・られ+なければならない」の形式となっている。
一 教育は、・・自主的精神に充ちた心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならない。(一条)
二 教育の目的は、あらゆる機会に、あらゆる場所において実現されなければならない。(二条)
三 すべて国民は、ひとしく、その能力に応ずる教育を受ける機会を与えられなければならないものであって、・・。(三条)
四 すべて国民は、・・人種、信条、性別、社会的身分、経済的地位又は門地によって、教育上差別されない。(三条)
五 ・・、教育上男女の共学は、認められなければならない。(五条)
六 このためには、教員の身分は、尊重され、その待遇の適正が、期せられなければならない。(六条・二)
七 このためには、教員の身分は、尊重され、その待遇の適正が、期せられなければならない。(六条・二)
八 家庭教育及び勤労の場所その他社会において行われる教育は、国及び地方公共団体によって奨励されなければならない。(七条)
九 家庭教育及び勤労の場所その他社会において行われる教育は、国及び地方公共団体によって奨励されなければならない。(七条)
一〇 教育は、不当な支配に服することなく、国民全体に対し直接に責任を負って行われるべきものである。(一〇条)
一一 教育行政は、この自覚のもとに、教育の目的を遂行するに必要な諸条件の整備確立を目標として行われなければならない。(一〇条・二)
一二・・、適当な法令が制定されなければならない。(一一条)

(新教育基本法)二〇〇六年
二〇例中一二例(六〇・〇%)が「れ・られ+なければならない」の形式となっている。
一 教育は、人格の完成を目指し、平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならない。(第一条)
二 教育は、その目的を実現するため、学問の自由を尊重しつつ、次に掲げる目標を達成するよう行われるものとする。 (第二条)
三 国民一人一人が、自己の人格を磨き、豊かな人生を送ることができるよう、その生涯にわたって、あらゆる機会に、あらゆる場所において学習することができ、
四 その成果を適切に生かすことのできる社会の実現が図られなければならない。(第三条)
五 すべて国民は、ひとしく、その能力に応じた教育を受ける機会を与えられなければならず、人種、信条、性別、社会的身分、経済的地位又は門地によって、教育上差別されない。 (第四条)
六 国及び地方公共団体は、障害のある者が、その障害の状態に応じ、十分な教育を受けられるよう、教育上必要な支援を講じなければならない。(第四条・二)
七 義務教育として行われる普通教育は、各個人の有する能力を伸ばしつつ社会において自立的に生きる基礎を培い、また、国家及び社会の形成者として必要とされる基本的な資質を養うことを目的として行われるものとする。(第五条・二)
八 義務教育として行われる普通教育は、各個人の有する能力を伸ばしつつ社会において自立的に生きる基礎を培い、また、国家及び社会の形成者として必要とされる基本的な資質を養うことを目的として行われるものとする。(第五条・二)
九 義務教育として行われる普通教育は、各個人の有する能力を伸ばしつつ社会において自立的に生きる基礎を培い、また、国家及び社会の形成者として必要とされる基本的な資質を養うことを目的として(普通教育は)行われるものとする。(第五条・二)
一〇 前項の学校においては、教育の目標が達成されるよう、教育を受ける者の心身の発達に応じて、体系的な教育が組織的に行われなければならない。(第六条・二)
一一 この場合において、教育を受ける者が、学校生活を営む上で必要な規律を重んずるとともに、自ら進んで学習に取り組む意欲を高めることを重視して(教育が)行われなければならない。 (第六条・二)
一二 大学については、自主性、自律性その他の大学における教育及び研究の特性が尊重されなければならない。(第七条・二)
一三 前項の教員については、その使命と職責の重要性にかんがみ、その身分は尊重され、待遇の適正が期せられるとともに、養成と研修の充実が図られなければならない。 (第九条・二)
一四 前項の教員については、その使命と職責の重要性にかんがみ、その身分は尊重され、待遇の適正が期せられるとともに、養成と研修の充実が図られなければならない。 (第九条・二)
一五 個人の要望や社会の要請にこたえ、社会において行われる教育は、国及び地方公共団体によって奨励されなければならない。 (第一二条)
一六 良識ある公民として必要な政治的教養は、教育上尊重されなければならない。 (第一四条)
一七 宗教に関する寛容の態度、宗教に関する一般的な教養及び宗教の社会生活における地位は、教育上尊重されなければならない。(第一五条)
一八 教育は、不当な支配に服することなく、この法律及び他の法律の定めるところにより行われるべきものであり、教育行政は、国と地方公共団体との適切な役割分担及び相互の協力の下、公正かつ適正に行われなければならない。 (第一六条)
一九 国及び地方公共団体は、教育が円滑かつ継続的に実施されるよう、必要な財政上の措置を講じなければならない。 (第一六条・四)
二〇この法律に規定する諸条項を実施するため、必要な法令が制定されなければならない。 (18条)
〈注2〉
実際の用例調査を行った韓静妍(2010)によると、翻訳文学では一八九〇年代から非情の受身の割合が高くなりはじめ一九一〇年代には四三・二%となり、一九三〇年代には四九・三%とさらに上昇し、翻訳思想書は一八七〇年代からすでに非情の受身の割合が五七・七%と高いことを示し、それが一九三〇年代には九〇・三%にも及んでいることを示している。その一方で、日本文学作品の場合には一九三〇年代に非情の受身が四〇・八%になり、一九六〇年代でも四四・五%と上昇率が高くないことを示している。

(参考文献)
清水康行(一九八九)「文章語の性格」『講座日本語と日本語教育・第5巻』明治書院
金水敏(一九九一)「受動文の歴史についての一考察」『国語学』164集
韓静妍(二〇一〇)「近代以降の日本語における非情の受身の発達」『日本語の研究』第6巻4号
ちくま学芸文庫(二〇一一)『英文対訳 日本国憲法ちくま学芸文庫