慣用句など

省略・繰り返し・語順転換・縮約
1.省略
文脈から予測できたり、一度話題になった要素は、省略されることが多い。省略される要素は、主題、補足語、述語、助詞、主節など多岐にわたる。
(例)
鯨は魚ではない。(鯨は)哺乳類だ。(主題の省略)
太郎は(どこにいるの)?(述語の省略)
ご飯(を)食べた?(助詞「を」の省略)
あっ、雨(が)降っている。(助詞「が」の省略)
これ(は)いくらですか。(助詞「は」の省略)
私はここにいますから(用事があったら呼んでください)。(主節の省略)
この家は高いでしょうね。(この家は高い)だろうね。(先行要素の省略)
2.繰り返し
本来省略すべき要素を省略しないで繰り返すと、場面の転換や強調といった特別の効果が出る場合が多い。
(例)
花子に会った。忙しそうだった。花子はいつも忙しそうにしている。
→(「花子」のいつもの性質を説明)
花子に会った。忙しそうだった。(花子は)いつも忙しそうにしている。
→(この場面で話者が持った乾燥の報告)
寒い、寒い。(程度の強調)
どうも、どうも。(感動詞の繰り返し)
3.語順転換
種々の事情によって、語順が転換することがある。語順の転換には主として、要素の前置と要素の後置がある。
(例)
そのことを二人はずっと話していた。
←二人はそのことをずっと話していた。
美しい街ですよ、京都は。
←京都は美しい街ですよ。
4.縮約
くだけた話しことばでは、単語や語句の縮約が起こることがよくある。縮約の仕方は、方言や場面、各単語によって異なる。
(例)
−ければ(きゃ)・−けれども(けれど・けど)・−でしまう(ちゃう・ちまう)
−では(では・じゃ)・−ではない(じゃない)・−ている(てる)・−ておく(とく)
−のだ(んだ)・−ので(んで)・それは(そりゃ)・それなら(そんなら)

分化文と未分化文

(基本的性質と分類)

a.分化文・・述語を中心として組てられた文
1.平叙文
(例)太郎は、きのう、映画を見に行った。
2.疑問文
(例)太郎は、きのう、映画を見に行きましたか。
3.命令文
(例)ぜひ、映画を見に行きなさい。
4.感動文
(例)よく間に合ったものだ。
何度、やりかけたことか。
あれっ、来ていたのか。

b.未分化文・・述語中心の組み立てを持たない文
1.平叙文
(例)あっ、雨。
2.疑問文
(例)雨?
3.命令文
(例)おい、お茶。
4.感動文
(例)まあ、きれいな月。
5.感情・感覚を示すもの
(例)痛い。ついてないなあ。
6.受け答えを表すもの
(例)はい。なるほど。
7.呼びかけを表すもの
(例)おい。もしもし。
8.儀礼の慣用表現
(例)こんにちは。失礼します。





慣用句

(基本的性質)
いくつかの語からなる句で、語の結びつきが固定し、句全体の表す意味が特殊化したものである。慣用句においては、構成する語の意味が句全体の意味に直接には反映されない。

1.組み立てによる慣用句の分類
a補足語+述語
(例)肩を落とす。音がする。
b連体修飾+名詞
(例)目の毒
c述語を修飾
(例)手もなく

2.その他の慣用句
a−によれば・よると
(例)ラジオによると、関東地方では大雪になるそうだ。
b−必要がある・ない
(例)そこに行く必要はない。
c−ばかりか−も
(例)副キャプテンばかりか、キャプテンも負けてしまい、散々な結果だった。
d−やいなや
(例)その仕事が終わるやいなや、すぐに他の仕事が舞い込んだ。
e−ことは−が
(例)書くには書いたが、出来栄えはよくはない。
f−か
(例)緊張のためか、ろれつがまわらなかった。
g−から−にかけて
(例)東京から甲府にかけて2時間かかる。