辞書の発達

辞書の発達

1.古辞書
室町時代の末、慶長年間(1596−1615)までのものを指すことが多い。古くは僧侶や学者が経典や漢籍を解釈したり、注記を付したりするもので、利用層も一部の知識階級に限られていたのに対して、時代が下るに従い、識字層も広がり、通俗辞書と呼ばれる庶民が利用するための辞書が多く作られるようになってきている。
(引き方)
字形から引くもの
音声から引くもの
(分類)・・漢字漢語の辞書と国語の辞書とがあるが、中国の辞書にならって三種類のものを作成してきた。
a.意義分類(辞書)・・『爾雅』(紀元前100年ごろ)
b.漢字を分類・読み方・意味の説明を施す(字書)・・『説文解字』(許慎・紀元前100年ごろ)・『康煕字典』(清・陳延敬)
c.漢字の字音で分類(韻書)・・『広韻』(宋・陳彭年)

2.時代別の代表的な古辞書

a.上代の辞書
『篆隷万象名義』空海・・『玉篇』にもとづいて反切や漢文の注を付したもの。

b.中古の辞書
『新撰字鏡』昌住・・漢和辞典b
『和名類聚抄』源順・・和訓を付したものa
『類聚名義抄』・・漢和辞典。観智院本には、和訓、声点がついており、利用価値が高い。b
『色葉字類抄』『伊呂波字類抄』・・いろは順の漢和辞典。和語にも声点が付されている。a

c.中世の辞書
『字鏡集』・・漢和辞典
聚分韻略』虎関師練・・漢詩文作成のための韻書c
『明語記』・・語源辞書
『塵袋』・・百科事典
『下学集』・・国語辞典a
『撮壌集』飯尾永祥・・百科事典
『倭玉篇』・・漢和辞典
運歩色葉集』・・いろは順の国語辞典
『節用集』・・国語辞典a
『温故知新書』・・五十音順の国語辞典
『日葡辞書』・・キリシタン資料
『落葉集』・・キリシタン資料。漢和辞典

d.近世の辞書
『倭訓栞』谷川士清・・国語辞典
『雅言集覧』石川雅望・・国語辞典
『俚言集覧』太田全斎・・国語辞典

e.近代以降の辞書・・1.明治維新前後から大正初年まで
近代的辞書の揺籃期・中世の遺物はなお残存する
2.第一次大戦から第二次大戦まで
大型辞書がようやく完成した時期
3.敗戦から現在まで
         現代語辞書としての学習・小型の辞書が続出した時期
明治時代
『ことばのその』近藤真琴
『ことばのはやし』物集高見
言海』『大言海大槻文彦
『日本大辞書』山田美妙・・アクセントを付す
『ことばのいづみ』落合直文
『辞林』金沢庄三郎
大正時代
大日本国語辞典
『日本外来語辞典』
『日本古語大辞典』
昭和時代
『大辞典』
『広辞林』
広辞苑』『大辞林
『言泉』
『明解国語辞典』『新明解国語辞典』『三省堂国語辞典』『明鏡国語辞典
日本国語大辞典








3.現代の辞書・・中学生・高校生の学習用として全訳版の古語辞典・漢和辞典が刊行されるようになった。以下に大学生・大学院生・教員・社会人向けの辞書の例を示す。

a.【国語辞典】
日本国語大辞典』(初版・二版)小学館・・国語と古語を兼ねた最大規模の国語辞典
日本国語大辞典』(精選版)小学館
広辞苑岩波書店・・百科事典の要素を持たせた
大辞林三省堂
小学館日本語新辞典』小学館
『岩波国語辞典』岩波書店
集英社国語辞典』集英社
『旺文社国語辞典』旺文社
新明解国語辞典三省堂・・文明批評・第7版以降は漢和辞典の要素を盛り込む
三省堂国語辞典三省堂・・最新の現代語を盛り込む
『新選国語辞典』小学館
明鏡国語辞典』大修館書店
新潮現代国語辞典 現代語・古語』新潮社・・文学的用例
『学研現代新国語辞典』学研
『角川必携国語辞典』角川書店
『ベネッセ表現読解国語辞典』ベネッセコーポレーション
『日本語 語感の辞典』岩波書店
『基礎日本語辞典』角川書店

b.【古語辞典】
『時代別古語大辞典』角川書店
『角川古語大辞典』角川書店
小学館古語大辞典』小学館
『新明解古語辞典』(補注版)
『岩波古語辞典』岩波書店・・通時的
『例解古語辞典』三省堂・・共時的
『新明解古語辞典』三省堂
『詳説古語辞典』三省堂
『ベネッセ古語辞典』ベネッセコーポレーション
『古語林』大修館書店
『角川必携古語辞典』角川書店
『旺文社古語辞典』旺文社




c.【漢和辞典
大漢和辞典』大修館書店・・最大規模の漢和辞典
『廣漢和辞典』大修館書店
『学研漢和大事典』学研
『漢語林』大修館書店
『新字源』角川書店・・古代中国人の視点での記述
『漢字源』学研
『全訳漢辞海』三省堂・・語法説明・漢和辞典初の全訳版
『新明解漢和辞典三省堂
『岩波新漢語辞典』岩波書店
『字通』『字統』『字訓』平凡社・・白川静の三部作

4.辞書の必要条件−大槻文彦
A各語の下には発音を表記する。
B品詞を明記する。
C語源を説明する。
D語の本義転義を説明する。
E出典を掲載する。