夏目漱石と漢文

夏目漱石と漢文
 夏目漱石の漢文の力は、みなさんは知っていますか?なかなかのものですよ。吉川幸次郎の『漱石詩注』(岩波文庫)を読むとよくわかります。
夏目漱石漢詩の創作力はすさまじいものがあります。夏目漱石は、二松学舎(当時は漢文の専門学校)で、朝から晩まで、漢文を集中的に学びました。当時の成績表が残っていますが、かなり上位の好成績です。その漢文という根底があったからこそ、秀英学舎(現在の明治学院大学)や東京大学で英語を専門にしてからも、英語の学力的な伸びが著しかったのだといわれています。漢文には魔力があり他の科目に集中できないということで、東大では漢文の書物をすべて捨てて英語の勉強に集中した夏目漱石でしたが、晩年はまた、漢詩・漢文を小説の原稿の合間に創作していました。漢文でスタートして、漢文で終わった人生ですね。
 また、夏目漱石の弟子の芥川龍之介も漢文と英語がよくできたので、東京大学での専攻を英語にするか、漢文にするのか、かなり迷ったと記されています。漢文を専攻していたら、偉大な漢学者になっていたかもしれませんね。夏目漱石と双璧をなす森鴎外漢詩の創作力も相当なものです。森鷗外は子どもたちの名前にも、漢語の知識を利用した名前を付けましたし、子どもたちに学問の基礎としての漢文を学ばせるために二松学舎に入学させたほどでした。おおいに漢文を勉強しましょう。