漢文の学習参考書(1)

 おはようございます。今回から、「漢文の学習参考書」について書いていきます。戦後の漢文の学習参考書を考えたとき、まずあげられるのは小林信明氏(大学教授)の『漢文研究法』(洛陽社)があげられます。この本は、名門校を中心に売れたハードカバーの本でした。しかし、分厚い本のために読みきることが難しく、レベルも大学入試の水準をはるかに超えるものでした。そのため、教師向き、大学院入試向きの本といえます。同様に、山本未正・山田勝美の『漢文入門』(駿台文庫)、小川環樹・西田太一の『漢文入門』(岩波全書)、二畳庵主人という人物の書いた『漢文法の基礎』(Z会出版)という本も漢文マニア向きの本でした。
 特に、『漢文法基礎』は現在ではプレミアがついている本で、めったに手に入らない本となりました。この『漢文法基礎』の著者の二畳庵主人(にじょうあんしゅじん)は、本名は大学教授であった「加地伸行(かじのぶゆき)」氏です。加地伸行氏は、中国哲学の大家といわれる存在です。大学教授の中には、学習参考書を書くことを恥ずかしいと思う意識を持つこともあり、このようにペンネームで書いたようです。これらの学習参考書は、どれも水準が高く、いかにこれらの参考書よりもわかりやすくコンパクトにまとめるか、大学入試に役立てるかについて、参考書の改良がなされてきたといえます。
 では次回は、改良された参考書のベストセラーについて書いてみたいと思います。