現代文の参考書の歴史(4)

 今回は、「田村の現代文」について書いてみます。長く現代文のバイブルであり続けてきた『新釈現代文』(新塔社)でしたが、『田村の現代文講義』(代々木ライブラリー)の出現によって、その地位を追われました。この本は、問題集型参考書ということで、たいへん詳しい解説で問題数を少なくし、参考書の要素も持たせようとするというもので、解答と問題とが別冊になっており、当時としては画期的でした。著者の田村秀行氏は、京都大学インド哲学科の出身ということもあり、文学部の日本文学科の視点とは異なった視点で文章をみることができたといえます。教養としての要素をもたせながら、現代の日本語として読解しようという方針のもとに、解説を施していました。現代文の実力養成として、その後十年ほどは、書店の現代文の学習参考書のコーナーは、田村時代となりました。それは同時に、学習参考書の世界では、ソフトカバーがハードカバーを駆逐した時代になったことも示していました。書店からは、ハードカバーの本が次々に姿を消していきました。現在の予備校の現代文に大きな影響を与えた本だといえます。現在でも、田村秀行氏の本は買うことが出来ますが、格調の高い解説なので実力がある程度ないと読みこなせないかもしれません。