テクスト分析について

 こんにちは。今晩から、岩手県にセンター・私立・国立大学受験の国語の講義で出張です。そのため、このブログは、来週の水曜日(7月29日)までお休みさせていただきます。

 今回は、テクスト分析について考えてみます。かつての近代文学は、作品・作家論でした。そのため、作品と作家とを結びつけて考えていました。しかし、それでは作家の人柄を知ると、そのような固定観念で物事をみてしまい、作品自体を客観的にみることが難しくなります。そこで登場したのが、テクスト分析です。これは、作品だけをじっくりと読み込み、背景にあるものを読み取っていくものです。私が学生の頃は、ちょうど作品・作家論とテクスト分析との転換期でした。そのため、私の教わった教授は、年配の教授は作品・作家論で講義をしましたし、若手の教授はテクスト分析で講義をしていました。前田愛を嚆矢とするテクスト分析で欠かせないのは、文学・社会学歴史学の三つを融合して考えることが要求されます。もし、テクスト分析の基本的な考え方を身につけたいのであれば、筒井康隆の書いた『文学部唯野教授』(岩波現代文庫)が絶好の入門書です。これは、ただの小説ではありません。注記の箇所で多くのことを書いています。多少記述に甘い箇所もありますが、テクスト分析の入門書としては、よい出来です。そのような眼で読んでみるとまた、違った楽しみ方ができるのではないでしょうか。この本を読んでから、前田愛『都市空間の中の文学』『テクスト分析入門』(ちくま学芸文庫)や柄谷行人『日本文学の起源』などを読むとよいでしょう。

 では、次回は7月30日に更新します。