兼好法師の『徒然草』について

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兼好法師の『徒然草』について」
 『徒然草』には、「人生論」が語られています。また、教養書としても読むことができます。しかし、意外と知られていない一面があります。実は、兼好は時の権力者である高師直と懇意にしており、政治とも結びついていたり、不動産なども多く所有している財テク家でもありました。また、出家はしているものの、若い頃は遊女とよく遊んでいたようです。また、和歌の世界では、二条派和歌四天王(頓阿・浄弁・慶運・兼好)と呼ばれているほど、歌人としての評価が当時は高かったようです。そのため、兼好法師が生きているころには、和歌・財テクといったことで有名で、『徒然草』は知られていませんでした。ところが、兼好法師の死後、連歌の心敬という人物が弟子たちに、教養書として役立つので『徒然草』を勧めたところから、一気に広まりました。現在では、『徒然草』は研究されつくしてしまい、あまり研究する学者はいません。しかし、活学として、人生論として読むことはまだできます。
 兼好の本名は、「卜部兼好(うらべかねよし)」です。出家して「兼好(けんこう)」と名乗り、「兼好法師(けんこうほうし)」と呼ばれました。「卜部」家は、兼好の死後に「吉田」と苗字を改めました。そのため、「吉田兼好(よしだけんこう)」と呼ばれることもありますが、少なくとも生きているときには「卜部」ですから「卜部兼好」「兼好」「兼好法師」と呼ぶのがよいでしょうね。実際、学術の世界ではそのように呼びならわしています。『徒然草』について、簡単にまとめておきますので、参考にしてくださいね。
(作者)兼好法師
(成立)1331年ごろ(鎌倉時代から室町時代にかけて)
(内容)
○多面的な教養をもつ著者が、興に従って書いた随筆。
○240余段の短章からなる。
○求道・処世論・趣味論・自然観照・考証などの多岐にわたる。
(特徴)
○物事を多面的に観察し、合理的・常識的態度で書いている。
儒教・仏教・老荘思想のほか、尚古趣味や享楽思想が混合している。
○文体は当時新興の和漢混交文と、流麗な擬古文が混在する。