脳と論語

脳の五つの使い方と『論語』の対応
都立駒込病院神経科外科部長の篠浦伸禎(しのうらのぶさだ)氏は『脳は「論語」が好きだった』(致知出版社)という著書を刊行しています。試しに読んでみると、面白い本でした。脳の五つの使い方と『論語』の「仁・義・礼・智・信」とが対応するそうです。まとめてみます。
○一次元(礼)
挨拶など、あまり考えなくてもできる日常で基本となる脳の使い方。
○二次元右脳(仁)
現実に対応し、対象(物・人)を主体にして調和に関わる脳の使い方。相手の表情を見て、気持ちがわかるといった相手を思いやる感情。
○二次元左脳(智)
言語などによって対象を解析し、詳細なデータをもとに進歩に関わる脳の使い方。物に名前をつけて記憶するといった働き。
○三次元右脳(信)
自分を中心に空間全体を俯瞰して、その中で優先順位をつけていま一番関心のある現実に対応する脳の使い方。自分に損であっても、相手を助けたり、物事を成し遂げるための選択肢を選ぶ。
○三次元左脳(義)
自分の考えを中心に多くのデータを俯瞰し、言語などを用いて分析し、それに優先順位をつけて、そこから原理・真理を抽出するといった進歩に関わる脳の使い方。正邪の混在した多くの考えの中から、正しさを軸にみたときに優先順位が高いと思われる考え方を抽出。
 このように、合理的・論理的な左脳と、情緒的・行動的な右脳、それに加えて処理する情報量の少ないものから多いものに向かって、一次元、二次元、三次元と定義でき、それらの組み合わせから五つに分類できます。さらにその五つを検討すると、『論語』を学ぶことは「脳」の働きにとっても、たいへんよいことだという結論になります。孔子は偉大ですね。