続・「可能動詞」と「ら抜けことば」

山田敏弘(2004)では、学校文法の「書く(五段動詞)→書ける(可能の形)」「食べる(一段動詞)→食べられる(語幹+可能の助動詞)」「する(サ変動詞)→できる(特殊形)」の例をとりあげて、次のように日本語教育を生かした特色ある説明をしている。

明治時代   昭和後期
五段動詞 書かれる →     書ける
一段動詞 食べられる           →(食べれる)
今でも地方によって、また語によっては「行かれる」など五段動詞の可能形を長い形で言う人もいます。「食べれる」はいわゆるら抜きことばです。
この変化をローマ字で書くと次のようになります。
五段動詞 kak-are-ru→kak-e-ru
一段動詞 tabe-rare-ru→(tabe-re-ru)
五段動詞の「書ける」はひらがなで書く以上、語幹の母音が変わって可能動詞になったと説明するしか方法がありませんが、ローマ字書きをすればeが取り出せます。このeが五段動詞に続く可能の「助動詞」です。
また、この「書ける」は「食べれる」というら抜きの形と対応していることもよくわかります。
このような歴史的変化に加え、「する」に対しては特別な動詞「できる」を用いることから、複雑な対応をしているのです。
可能動詞という考え方は、歴史的変化のつじつま合わせです。少なくとも意志的動作を表す五段動詞にはすべてeを介した可能の形があります。この可能の形を可能動詞と呼び、これ以上切れない単位と考えるのは、ひらがなという表記法にしばられた考え方でしかありません。
(注)
○学校文法では「れる」「られる」を可能の助動詞と教えています。つまり「行かれる・食べられる」こそ正式な形ということです。
○短くなっていくのは、ほかに尊敬や受身の意味をもつ「れる・られる」の役割を1つでも減らそうとする動きと考えられます。
○一段動詞ではreという助動詞によっていわゆるら抜きの可能形ができます

この説明では、ローマ字書きすることで視点を変える味方を示している。また、ことばは変化し、システム化するという考え方をしている。