岡本千万太郎と阿部正直の受身記述

「る・らる(れる・られる)」の多義性についても、できるだけ少なくしたほうがよいとする立場から、岡本千万太郎(1942)では、教授法の立場から自発の意味を受身に含ませて、可能や尊敬以前に、まず受身を理解させることの必要性を以下のように述べている。

〔受身・可能・尊敬〕
同じ形のル・ラル(レル・ラレル)が受身・可能・尊敬の三種に分かれるといふのだから、生徒はまごつく。いや教師も判断に迷ふ時があるから、うつかりしてはをれない。で、今その見分け方だけを示さう。大ざっぱではあるが、受身の時は動作をするものとされるものとが考へられ、その動作をするものの動作(それが動詞で表はされる)の影響を動作をされるものが、身に受けるのが、即ち受身だと教へる。勿論例をあげて、日本語の受身の特徴を了解させておく。

また、阿部正直(1939)では、受動形をいかに修得させるかということに主眼を置き、「廿一 受動形」で、「ます型動詞」と「します型動詞」に分けて記述を行い以下のようにまとめている。

(一)ます型動詞はれます、或はられますをとる。この場合、規則動詞はれますをとり、不規則動詞はられますをとる。
受動形=ます型動詞の否定命令形の前半+れます型或はれます
(二)します型は常にされますをとる。
受動形=します型動詞−します+されます