「は」のピリオド越え

三上章(1960)の示した「は」の「ピリオド越え」を精密に分析した論稿として、久野翮(1978)があげられる。久野翮(1978)は、視点を重視し、以下のように分析・整理している。
(1)反復主題省略
第一文と第二文の主題が同一である場合は、第二文の主題を省略できる。(「Xハ」のピリオド越え)
(2)主語を先行詞とする主題省略
「Xガ・・。Xハ・・。」の「Xハ」は省略できる。
(3)新主語省略
「Yガ・・X・・。Xハ・・。」の「Xハ」は、第一文、第二文とも、Xの目から見た記述か、YよりもXよりの視点から見た記述である場合に限り、省略できる。
(4)異主語省略
「Yハ・・X・・。Xハ・・。」の「Xハ」は、話者の視点が完全にYのそれと合致し、第二文も、Yの目から見たXの記述である場合に省略できる。
複文についても、以下のようにまとめている。
○従属文の主語と、主文の主題が等しい時(即ち「Xガ・・、Xハ・・。」)、従属文の主語を残して主題を省略することは難しい。
○「Yガ・・、Xハ・・。」の主題「Xハ」の省略は、次の二条件の何れかが充たされた時のみ可能である。
(鄯)文全体が、X寄りの視点からの記述であり、(E(X)>E(Y))尚かつXが先行文脈の主題であることが明確な場合。
(鄱)話者が完全に自己をYと同一視し(E(Y)=1)、主文もYの視点から見たXに関する記述である場合。