山田孝雄と細江逸記

おはようございます。今回は、日本語文法と関わりのある人物として、山田孝雄(やまだよしお)と細江逸記(ほそえいつき)を紹介します。
 山田孝雄は、最後の国学者といわれた人物で、現在の学校文法の副詞や助詞の考え方は、この山田孝雄の説を取り入れています。論理学的で国学的な文法理論のほか、『平家物語』の研究、俳諧の文法の研究、五十音図の研究、連歌の研究、祝詞の研究、漢文訓読語の研究など、文学、文法、歴史などの幅広いジャンルでの研究をした人物です。まさに、折口信夫(おりくちしのぶ)と双璧をなす、昭和を代表する偉大な国学者です。学歴は小学校しか出ていませんが、合格率3%前後の教員採用検定試験(現在は実施されていません)を突破し、高校の倫理と国語の教員をしながら研究に没頭し、東北大学から文学博士を授与され、東北大学の教授をつとめた人物です。天才的な頭脳の持ち主です。ご子息(山田忠雄山田俊雄・山田英雄)は、九人いましたが(男は四人)、九人のうち三人(一人は山田春雄という方で高校の数学の教師になりました)は東大卒で学者になりました。『日本文法論』という大著がありますが、この本はすばらしい内容です。読破するのに私は二年かかりました。最近は読破しておらず、聞きかじり程度で『日本文法学概論』という本だけを読んで山田孝雄の文法理論を批判する学者もいますが、とんでもないことです。批判するなら、すべて読破しなくては正しく批判することはできないからです。なお、私の意見では、山田孝雄本居宣長を超えています。
 もう一人、英語学者の細江逸記がいます。細江逸記は学校文法の五文型を推進した人物で、斉藤秀三郎(子息はチェリスト指揮者の齊藤秀雄)と並んで、学校文法に多大な影響を与えた人物として知られていますが、それだけでなく、非常に語学のセンスのある人物で、古文を読破しており、「き」と「けり」の違いは、「経験回想(体験過去)と目睹回想(伝聞過去)」としました。これには例外はあるものの、卓見で学校文法でも採用されています。昔の英語学者は、このように古典に通暁している学者が多くいたものです。しかも、山田孝雄と細江逸記は、国学者本居宣長の和歌を著書の最初に引用しています。この二人の言語観はよく似ているといわれてりもしています。ただ具体的に比較して似ているかを論じた研究はないので、この二人の言語観を研究してみたいと思っています。