和歌の技巧

【補足資料】

1.「見立て」の例
嵐吹く三室の山のもみぢ葉は龍田の川の錦なりけり(『後拾遺集』366)
2.「擬人法」の例
わたの原八十島かけて漕ぎ出でぬと人には告げよ海人の釣舟(『古今集』407)
3.「本歌取り」の例
み吉野の山の秋風さ夜ふけてふるさと寒く衣うつなり(『新古今集』483)・・本歌取り
み吉野の山の白雪つもるらしふるさと寒くなりまさるなり(『古今集』325)・・本歌
4.「離合」の例
吹くからに秋の草木のしをるればむべ山風を嵐といふらむ(『古今集』249)
5.「体言止め」の例
これやこの行くも帰るも別れては知るも知らぬも逢坂の関(『後撰集』1089)
6.「つつ止め」の例
君がため春の野に出でて若菜つむわが衣手に雪は降りつつ(『古今集』21)
7.「ミ語法」の例
風をいたみ岩うつ波のおのれのみくだけてものを思ふころかな(『詞華集』211)
8.「折句」
からころもきつつなれにしつましあればはるばるきぬるたびをしぞおもふ(『伊勢物語』9段)
→「かきづばた」
9.「沓冠」の例
ろくろひくちがひの糸のとにかくにくもでにものを思ふこのごろ(『三国伝記』)
10.「折句沓冠」の例
よもすずしねざめのかりほたまくらもまそでもあきにへだてなきかぜ(兼好)
→よねたまへぜにもほし(米給へ銭も欲し)
よるもうしねたくわがせこはてはこずなほざりにだにしばしとひませ(頓阿)
→よねはなしぜにすこし(米はなし銭少し)
11.「句割れ」の例
桜あさのをふの下草しげれ ただあかで別れし花のななれば(『新古今集』・185)
12.「字余りの例」・・「本居宣長の字余り法則」=句中に「あいうえお」がある。
わびぬれば今はた同じ難波なるみをつくしても逢はむとぞ思ふ(『後撰集』960)
今来むと言ひしばかりに長月の有明の月を待ち出でつるかな(『古今集』691)

(歌論の用語)
和歌の本末・・和歌の上の句と下の句
腰の句・・和歌の第三句目
腰折れ・・下手な歌
おもて歌・・代表歌
心と詞・花と実・・内容と表現