2013-01-01から1年間の記事一覧

南不二男の受け身記述

南不二男の受身記述−関与者の視点−南不二男(1993)は、教科研グループの研究を微視的な分析であるとし、構造で扱っているのが特徴である。接続助詞をもとに分類し、描叙・判断・提出・表出とした。描叙は「関与者構造」をなすものとして、その中で「使役」…

受身論争1

久野翮・黒田成幸の受身記述−受身論争1−受身文に対する生成日本文法の論争として有名なものとして、久野翮(1983・1986)と黒田成幸(1985)による論争が有名である。 久野翮(1983)は、中立受身と被害受身(間接受身)とに分け、黒田成幸(1979)の「affec…

欲求とは

生理的欲求・・身体内の臓器と関連して生じる 社会的欲求・・事物・待望・人間の力・他人の損傷・自己の損傷・他人との愛情など臓器とは直接関連のない要求をいう。心理的欲求という。 生理的欲求は、すべてホメオスタシスによるバランス調整によって起こる。

高橋太郎の受身記述

高橋太郎の受身記述高橋太郎(1985)は、ヴォイスを「たちば」として、「能動態(active voice,はたらきかけのたちば)」「受動態(passive voice,うけみのたちば)」「使役態(causative voice,つかいだてのたちば)」とし、他に「相互態」「再帰態」なども…

細江逸記の受身記述

細江逸記の受身記述−比較言語学と山田孝雄の影響−細江逸記(1928)は、英語やドイツ語とは異なることが一般に論じられているが、比較研究の立場からすると、印欧語族内でも異なって用いられていることを指摘し、「所相」は西欧諸国でも日常会話で用いられて…

岡本千万太郎と阿部正直の受身記述

「る・らる(れる・られる)」の多義性についても、できるだけ少なくしたほうがよいとする立場から、岡本千万太郎(1942)では、教授法の立場から自発の意味を受身に含ませて、可能や尊敬以前に、まず受身を理解させることの必要性を以下のように述べている…

松尾捨治郎の受身の論

短期間ではあるが、日本語教育の経験のある松尾捨治郎(1936)では、第6章の第8節「相の助動詞(受身 可能 使役)」で、「相」を「すがた」とし、受身の3要素として「動作を受けるもの」「動作をするもの」「動作」をあげている。松尾捨治郎(1936)では、以…

三矢重松の受身の論と日本語教育

関正昭(1997b)では、三矢重松の文法論にも、日本語教育実践経験の影響と見られる点があると指摘している。三矢重松(1908)では、「第7章 動詞の性相」の「第2節 被役相」の箇所で「非情の受身」「自動詞の受身」「受與」、「第5節 被能使の重用」の箇所で…

湯澤幸吉郎の受け身動詞の分類

○五段活用の自動詞となったもの 抱かる(抱かれる) 授かる(授けられる) おそわる(教えられる) 助かる(助けられる) 仰せ付かる(仰せ付けられる) 言いつかる(言いつけられる) ゆだる(ゆでられる) かぶさる(かぶせられる) ○下一段活用の自動詞と…

湯澤幸吉郎の受身記述

国際文化振興会(1944)『日本語表現文典』の受身記述この日本語テキストは、序文に湯沢幸吉郎によって主に書かれた口語テキストであることが示されている。林四郎(1960)では、以下のように高く評価している(注2)。文表現の意図によって、日本語の「言い…

基本文型の第一開花期の教科書

1岡本千万太郎(1940)「基礎文型の研究」『国語教育』 2(財)青年文化協会(1942)『日本語練習用 日本語基本文型』国語文化研究所[保科孝一、今泉忠義、大西雅雄、黒野政市、輿水実の共同研究の成果] 3国際文化振興会(1944)『日本語表現文典』国際文化…

日本語表現文典の受身記述

○国際文化振興会(1944)『日本語表現文典』の受身記述 この日本語テキストは、序文に湯沢幸吉郎によって主に書かれた口語テキストであることが示されている。 このテキストでは、第十八章で「受身の意を表す言ひ方」で扱われている。この章では、「他から動…

辞書信奉者の注意点

時々、私の講座で「辞書にはこう書いてある」ともってくる方がいます。辞書が全部正しいと思っているのでしょうか?以下に注意点を書きます。ただの権威主義のマニュアル人間に見えます。 ○『新明解国語辞典』『広辞苑』などは、偏った主観的な記述がみられ…

ことわざ二つ

冬来たりなば春遠からじ 読み(ひらがな) ふゆきたりなば はるとおからじ。 意味 今は不幸であるけれど、それを耐え忍べば、やがて幸せは、きっとやってくる、ということのたとえ。 解説 このことわざは、イギリスの詩人、シェリーという人の「西風に寄せる…

受け身の理論

受身文の分類と理論−松下文法を中心に− 現在の受身文の分類研究において果たした松下大三郎の業績は、先行研究でも必ず引用されるほどである。松下大三郎を嚆矢とした現代日本語の受身文の理論的研究を本章では概観し、松下大三郎の受身の論の中には、現在の…

負け惜しみの用法

軍記物語において、意味的には受身であり、「る」「らる」を使うべき箇所に、「す」「さす」が使われている箇所が目につく。例えば、以下のような例である。 ○太田太郎我身手おひ、家子郎等おほく討たせ、馬の腹射させて引き退く。『平家物語』 このような場…

受け身、自発、出来文

「る・らる」の自発根源説と受身根源説「る・らる」の意味展開には二説ある。すなわち、 ○受身→自発(自然勢)→可能(能力)→尊敬(敬語) ○自発(自然的実現・勢相)→受身(所相)・可能・尊敬(敬相) という、「受身根源説」と「自発根源説」である。 自…

古今和歌集の受身表現

『古今和歌集』 和歌における受身の例文として、次の例がよくあげられる。・・・今は野山し近ければ春は霞にたなびかれ夏は空蝉なきくらし秋は時雨に袖を貸し冬は霜にぞせめらるるかかるわびしき身ながらに・・・『古今和歌集』巻19・1003・壬生忠岑これは受…

国際化の名前

欧米でも名前の研究が盛んに行われていて、名前の心理学的研究も行われているそうです。マロリー・ウォーバー(イギリスの心理学者)は教育心理学の立場から、たいへん珍しい名前と一般的な名前とでの学園での満足度の調査を行いました。それによると、珍し…

日本の企業家

日本の企業家史 (江戸後期) 二宮尊徳・・資本主義の精神を説く (明治) 岩崎弥太郎・・三井財閥を興す 安田善次郎・・安田財閥を興す 澁澤榮一・・500もの会社を興す 豊田佐吉・・トヨタグループを創業する 三野村利左衛門・広瀬宰平・五代友厚・益田孝・…

西洋人の日本語研究−受身記述の場合−

西洋人の日本語研究−受身記述の場合− はじめに西洋人の日本語研究は、日本語学に大きな影響を与えている。日本語教育においても、日本語教育の根幹をなしたと評価されている長沼直兄は、日本語教授法の面では音声を重視するパーマーの影響を受けていることは…

離婚理由アンケート

離婚理由アンケート (男性) 1性格が合わない 2異性関係 3家族親族との折り合いが悪い 4その他 5性的不調和 (女性) 1性格が合わない 2暴力をふるう 3異性関係 4精神的に虐待する 5生活費を渡さない

トランスパーソナル心理学

ロジャーズやマズローらの人間性心理学の自己超越の概念を発展させて、個を超える領域への精神的統合を重んじる心理学。臨床的には一定の効果が確認されているが宗教、神秘主義であるという批判も根強い。代表者はスタニスラフ・グロフ、ケン・ウィルバー。 …

名前についての覚書

1縦割れ文字について 編と旁ですべて名前が構成されている名前は、楯に名前が割れているように見えるので、縁起が悪いとされてきましたから、苗字が編と旁から成る名前の方は、命名に気を付けてくださいね。 (例) 剣持仁郎・佐伯梅松2意味が通る名前 意味…

我が師・我が友-杉浦克己先生-

杉浦克己先生は、放送大学出身の初の放送大学教授といわれています。 しかし、実際には、東京学芸大学及び大学院の修士課程を修了し、都立高校の教員をしながら論文を書き、永野賢先生の指導のもと、放送大学研究生を修了した方で、専門は書誌学と日本語学で…

長沼直兄の日本語教科書における受身文について

長沼直兄の日本語教科書における受身文について はじめに本稿では、近代・現代の日本語教育に偉大な業績を残した長沼直兄の受身記述及び、長沼直兄編纂による日本語教科書における受身文の扱い方に焦点を当てて、考察することとする。丸山敬介(1997)、河路…

naganuma

長沼直兄の日本語教科書における受身文について はじめに本稿では、近代・現代の日本語教育に偉大な業績を残した長沼直兄の受身記述及び、長沼直兄編纂による日本語教科書における受身文の扱い方に焦点を当てて、考察することとする。丸山敬介(1997)、河路…

長沼直兄の置換表

Oziisan ni sikara- Syuzin ni tanoma- Hito ni warawa- Dorobo ni nusuma- Ame ni hura- -remasita. reru desyo. reso desu. renaide kudasai. retaku wa arimasen. 1.Oziisan ni sikararemasita. I was scolded by grandfather. 2.Shuzin ni tanomaremasit…

紫微斗数について

○紫微斗数について紫微斗数とは何か 紫微斗数は中国に起源を持つ占星術の1つです。基本的には生年月日、生誕時間、出生地の基礎データを下にして、個人の運命を予測する占い技術ですから、占星術と呼ぶことができるでしょう。現在、香港や台湾では非常に人気…

長沼直兄の日本語教科書の受身の全用例

(研究資料)長沼直兄(1931−1934)での受身の用例は以下の通りである。 ○巻一 第二部 (第三十二課) リンカンは一家が千八百三十年にイリノイ州にうつってから家を出て或時は人にやとわれて働き、又或時はしょうにんになって色々のしょうばいをやりました…